「さよなら。ありがと、な」

そう言われた時、あまり悲しいとは思わなかった。
それは、前からなんとなくそうなると予期していた部分があったからなのかもしれない。




「前から思ってたけど、しいなってゼロスと仲いいよなぁ」
「…は?なんだい突然」

感心したようにロイドは急にそんな事を口にした。

「うんうん!そうだよねロイド!」
「…そうかい?」
コレットまで賛同してきて、少したじろいでしまう。
「なんかお互いの事わかってるっていうかさ。やっぱ昔から付き合ってただけのことは…」
「え、そうなの!?」
ロイドはなにげなく言っただけに違いないだろうが、その言葉を違う意味で捉えたコレットが声を上げる。
その勘違いに気づいたしいなは、あわててそれを否定にかかる。
「ち、違うよ!!そういう意味じゃ…そもそもなんであたしがあんな奴と!ただの腐れ縁だよ!!」
コレットよりも上擦った声での否定にロイドはキョトンとし、コレットも勘違いに気づいたのか先程の興奮は冷めたようだった。
「え、…なんだ、そっかぁ。でもちょっと残念」
「…なにがだい?コレット」
「だって素敵だよね、そういうのって。やっぱり憧れるよ〜」

そんな女の子らしいコレットの反応に、しいなは笑みを浮かべる。
繕うことが苦手な自分の事だから、苦笑になってしまっているかもしれないが。


「―何してんのさロイド!」
そこへ少しおかんむりになったジーニアスがやって来た。

「今日は僕の料理手伝ってくれるって言ってただろ!」
「あ。いっけねぇ、忘れてた」
「ばっかじゃないの!いいから早く手伝ってよ!」
「わりー、わりー。じゃ、あとでな、しいな」
あわててロイドがジーニアスの元へと駆けていく。
「ジーニアス、私も手伝うよー」
「いいよ、コレットは。ロイドをこき使ってやるから」
「え゛〜」
それに続いてコレットもしいなの元から立ち去っていった。
あいかわらず、この三人の仲は良い。





三人の姿が見えなくなったところで、しいなは盛大に溜め息がもれた。

「し〜いな〜」
と、突如後ろからかかった声にビクリと反応してしまった。
自分でも油断しすぎたと思ったが後の祭りだ。

「ゼ、ゼロス!!もしかして今の聞いて…」
「嘘つき〜」
「………」
「ちゃぁんと、前に、お付き合いしてただろ?俺ら」
「…ふんっ、あんなの付き合ってたなんて言わないね。単に口約束しただけみたいなもんだったじゃないか」
しいながそう言い放つと、ゼロスは神妙な顔つきになって、一言


「しいな…そんなに俺さまとイチャイチャしたかったのか?」


ゴンっと景気の良い音が響いた。

「〜殴るよっ!!」
「痛っ!もー、殴ってから言うなよ〜」
「自業自得だろあんたはっ」
「―冗談だってば。お前がロイド君に知られたくないのだって分かってるし」
「///!?」

まさかの言葉にしいなは真っ赤になった。
誰にも話した覚えなどないのに、なんでよりによってゼロスが。

「…そうだろ?なになに、バレてないとでも思ってた?甘いなぁしいなは。分かりやすすぎ〜」

そう言って下品に笑うゼロスが気に食わなくて、今度は髪を思いっきり引っ張ってやった。

「あ・ん・た・は!!」
「いだだだ!髪はやめろよお前!!髪は男の命!」
「女だろ!…ほんとあんた口だけは減らないね」
「あーあー。んな乱暴に引っ張りやがって…痛んだりしたら本気で恨むぞ」
「自業自得だって何度も言ってるだろ」
「―へいへい。俺さまが悪うございました」
ゼロスは髪を気にしながら答える。




「―ところで、あんたさ」
「ん?」
「いつから気付いてた?その…あ、あたしが…」

自分からいうのはやっぱり恥ずかしい。
それを察したのか、ゼロスはちゃんと言えていない質問にも正しく答えた。

「―そうだな。お前と再会して結構すぐだな。ロイド君ばっか見てたからなー」
「…そっか」

確かに後ろからロイドを見ていたと思う自分は。
この事に気付いたのは実は最近だったりするが。

「しっかしお前。なかなか厄介なのに惚れたなぁ。ロイド君てば妙に他人のことは見てるんだけどな。自分に向けられてる好意とかに関しては全っ然なんだよなぁ」
「…ああ、確かにそうかもね…」

しいなはロイドの今までの行動を思い出した。
以前、コレットの感覚がなくなった時、その異常に真っ先に気づいたのはロイドだ。
しかしそれでロイドがコレットの特別な気持ちに気がついているかと言われると、それはないだろうと思う。
確かにロイドはコレットの事をとても大切に思っているのは間違いない。
ただ、それとロイドが自分たち仲間に対してとっている態度を比べると、実はそんなに変わらないように思える。
要するにロイドは天然なのだ。
だからこそ、あんなに素直に世界統合を目指す事が出来るのだと思うけれど。

「…でもあたしは羨ましいと思うよ。そういう人に好きになってもらえたらさ、本当に大事にしてもらえるんだろうなって」
「…お前がそういう奴になりたいんだろ?」
「べべ、べ、別に!あたしはそこまで言っちゃいないよ!」
「そーんな謙虚にしなくたっていいんだぜぇ?話聞いてんのは俺さまだけなんだしさぁ」
「本当にそういう訳じゃないっつーに!あたしは、見てるだけでいいんだよ」
「…」
「…ロイドはあたしを見てはくれないだろうし、いいんだ。ロイドに特別な相手が出来たら本当に応援したいと思うよ」

ただ単に自分に自信がない言い訳かもしれないけど。

「…ホント。なんであんな馬鹿でなきゃいけねーのかぁ」
「な!あんたに言われる筋合いなんか…!」
「違う。お前の事じゃねぇよ。ま、気にすんな」
「…?」

ゼロスの言い様に違和感を覚えた。
それを問おうと口を開いたところで、聞き慣れた声がかかる。

「―しいな!…と、ゼロスも来てたのか。2人とも飯にしようぜ!」
「おー、待ってました昼メシ〜v」

すると何事もなかったかのようにコロっと表情を変えたかと思うと、ゼロスはロイドの方へ身を翻してしまった。

「…あ、ゼロス…」


―短い間だったけど、ゼロスと付き合っていて気付いた事が少しある。
その一つはゼロスは触れてほしくない事は本当に上手くあやふやにしてしまう事だ。
…今もなんだか煙に巻かれた気がする。

―ゼロスはいつも私に肝心な事を言ってくれない。



「?しいなも早く来いよ。ジーニアスの飯だからうまいぜ!」
「…あぁ、うん。分かった」

なんだか寂しい気持ちになった気がしたが、それには気づかない事にした。





「ほんとまいったな…」

先に一人ジーニアス達がいる場所に向かいながら、ロイドとしいなが後から来るのを見つめる。
―気持ちに気付いたのは、しいながわかりやすいからだけじゃない。
しいなの見つめている先を自分も見つめていたからだ。


「…俺って意外と悪趣味…」











ゼロしいと見せかけて実はロイゼロ。カオスで申し訳ない。
実はゼロしいも好きという結構な雑食です。

ゼロスとしいな昔つきあっててもいいなって思う。まあなんも進展せず終わる感じの。
ていうか神子って簡単に交際とかやっちゃいけない立場だろうから、隠れてみたいな。
付き合おうって口にするだけ、実は本気だったりするといいなっていう。
しいなはまだ引きずっているところがある。
まあこれはロイゼロなんですけどww

ロイドに対しての気持ちには気付いてるけど、そこから先は望まないゼロス。
というか望みを持てないゼロス。

ロイドはゲームで全員落とせる主人公なだけあって、こんな話でもいいかなーなんて…。


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