ゼロスとの2人旅に大分慣れてきた頃。
イセリアに荷物整理を兼ねて戻ると、普段は忙しくあちこちを回ってるはずのもう一人の神子コレットがたまたま帰って来ているのに出くわした。
久しぶりに一緒に食事を一緒にして楽しかったのはよかったんだけど、酒をおいていたのはまずかった。
コレットに会ったのが嬉しかったのか、いつもならありえないくらいゼロスはべろんべろんに酔っ払って、ついには沈没してしまった。
しょうがなくコレットにはほどほどで帰ってもらい、ゼロスを自室まで運ぶ事にした。
「う、重い」
「なに〜、ロイド君それは酷くない?!俺さまの完璧なプロポーションの体に対してさぁ」
「お前の方がでかいんだからしょうがないだろ、文句あるなら手離すぞ」
「うわ、ちょ、やめてよハニー!!」
ゼロスがしっかと抱きついてきて、ロイドの心臓がはねる。
「…苦しいだろ」
平常心、と最近覚えた言葉を頭に浮かべながら、ゼロスをベッドに下ろす。
「…っておい、離せよゼロス」
もう抱きつく必要がないのに未だ離そうとしないゼロスに抗議の声をあげると、そこにはすごく楽しそうな笑顔があった。
そこまで崩した顔というのは俺の前でもめったにしないもので、少し油断してた。
ペロ。
…唇を舐められた。
にやあと笑ったゼロスを見て、思わず赤くなってしまった自分を軽く呪いたくなった。
「お前なぁ…」
「でひゃひゃひゃ、ハニーかーわいいー」
「だー!!お前ほんとに酒飲みすぎ!いいから寝てろっ」
照れ隠しにゼロスの頭を思い切りベッドに沈めておいた。
「…ねぇねぇロイドくーん」
「なんだ?」
いそいそと寝る準備をしようと、上着を脱ぎながら返事をする。
自分のベッドは今、ゼロスに占拠されている。
床で寝るために毛布を出さないと。
「俺さまと一緒に寝ないー?」
おもいがけない言葉に、思考は中断され、脱いだ上着をばさりと落とした。
「な、なんだよそれ」
我ながら慌てまくってると思いながらロイドは振り返る。
「んー?なーんかかわいいハニー見てたら添い寝くらいしてもいいかなーって思って。これ元からロイド君のベッドだし」
それに俺さま今すっごい気分いいしな。
そしてまたヘラっと笑ってみせる。
「…ゼロス」
「なになに?ロイドく…っと、おおおぉっ?!」
ロイドは先程もやったように唐突にゼロスをベッドに沈めた。
ただ先程と違うのは、ロイドがゼロスの腕を掴んでいて、更にはゼロスに覆いかぶさるように乗っ
かっている点。
「は、ハニー?」
「…俺さ、前にゼロスに自分の気持ち伝えたよな?」
「う、…うん」
ゼロスがあからさまにまずい、という顔をした。
酒が入っているからか、いつものポーカーフェイスはどこ吹く風といった感じだ。
感情がすごくわかりやすい。
ちょうどいいや。
「でもお前ははぐらかしたよな。だから今まで大人しくしてたんだけどさ」
「は…い…」
ゼロスの返事が段々と小声になっていく。
「なのにお前から誘うような事するのって、なんでだ?」
「さ、誘うって…。ぇっと…ロ、ロイドくん…さ…結構怒ってる?」
「…怒ってはないけど、いい加減はっきりしてもらいたいとは思ってる。ていうか、言わないとどかない」
「マジですか…」
「で、なんのつもりだったんだ?」
「いや…ね…?俺もちょっとふざけすぎたな〜って思ってはいるんだけど…」
ゼロスは視線をうろうろとさせながらしどろもどろに答える。
「俺の気持ち知ってたのに、ふざけてやったのかよ」
酒の勢いだけならまだしも、そうだったらさすがに傷つく。
すると跳ね起きるようにしてゼロスが近づき、大声をあげた。
「違っ!!そうじゃなくて!〜ってもう、あーあーわかりました!言いますよ!俺はロイドくんの事が大好きですっ!!じゃなきゃあんなこと、男なんかにやったりしませんっ!」
あーくそ、言うつもりなんてなかったのに…とつぶやきながらも。
ヤケクソになったのか、とにかくゼロスは白状した。
「さっき唇舐めた事とかか?」
「だぁっ!それを言うなこっぱずかしい!!」
「やったのはお前自身だけどな…ん、じゃあなんではぐらかしたりしたんだよあの時」
最初から言ってくれれば悩む必要もなかったのに。
思わずズイっと前に出てしまい、ゼロスを少し驚かせてしまったようだった。
「それは…ほら、俺さま世界中にいるハニー達を裏切る訳にいかないし…」
「本気で怒らせたら自分でもなにするか分からないぜ俺」
今の言葉は効いたらしい。ゼロスの笑顔が確実に引き笑いになった。
「…」
「ゼロス」
「…だって、まさかさ、ロイドくんがよりによって俺さまを選ぶとかさぁ。…間違った道歩ませちゃったみたいですっげぇ罪悪感が…」
「なんだよ罪悪感って。俺がお前がいいって言ってるんだから、それを信じればいいのに」
「でも」
「―ゼロスが好きだ」
「!!」
「ゼロスが信じるまで何回でも言ってやるよ。だからそういう風に俺の事気にしなくていい」
ゼロスは体育座りした格好でうずくまってしまった。
耳が赤くなってるの気づいてんのかな。
「…タラシ」
「…自分の言動を考えて喋れよお前。俺はお前だけだし」
「…なんもしてこないからとっくに諦めたんだと思ってた」
「それは見当違いってやつだな。俺、諦める気なんて全然ないから」
するとなにがおかしいのか、ゼロスはくくく、と笑い始めていた。
「…そうだったなぁ。世界統合の時のあのしつこさったらなかったもんな」
「な、なんだよ。お前だってそれに付き合ってたんだろ」
「まぁロイドのそういうとこが好きなんだけどね」
―ロイドはうつむいていたゼロスの顔を上げて、自分の顔を近づけた。
それに答えてゼロスも目を瞑った。
「じゃあ、寝るか」
そういうとロイドはシーツを捲って隣に入りこんできた。
「え、お前こっちで寝んの?」
「一緒に寝ようつったのは誰だよ。床寝はやっぱ嫌だし。大丈夫。なんもしないから」
「あ、そう…」
俺さまなんて事言っちまったんだろ…。酒って怖い。
そう思いながら自分も入り込もうとした。すると
「あ、そうだゼロス」
突然何か思いついたように、ロイドが身を起こした。
「ん?どした?」
「痕つけていいか?」
「…は!?ってうわ、ロイド!」
意味を計りかねて固まっていたら、有無を言わさず胸に顔をうずめられてしまっていた。
慌てる自分に構わず、ロイドはエクスフィアのそばにキスをする。
軽い痛みを感じるとすぐにロイドが離れ、そこに残されたのは白い肌に映えた真っ赤な痕。
「…これで明日、お前が二日酔いとかで忘れたとしても、証拠に残るだろ?」
へへっとロイドは嬉しそうに言った。
「んじゃ、おやすみ」
ロイドはパフっと勢いよく戻ったと思うと、すぐに規則的な呼吸音が聞こえてきた。
「…どこがなんもしないだよオイ…」
酒っ気など、とっくのとうに抜けてしまってる。
忘れる事なんて出来るはずがなかった。
更に忘れた〜と、はぐらかす事も出来ない状況に立たされてしまったようだ。
そこまでロイドが考えてたかは分からないが。
くっきりと残った痕を見て、ゼロスは改めて顔が火照った。
…なんつー強烈な証拠を残してくれたんだ。
「ほんとにロイドにだけはかなわねぇ…」
明日どんな顔して顔合わせればいいんだよ俺さま…。
ロイゼロ。ゼロスルートだけど完全にはくっついてない感じの。
ロイド→ゼロスのおせおせイメージが強いんですよね。ロイゼロは。
ゼロスははっきり気持ちを伝えないくせにちょっかいはかけるという。
エクスフィアのそばに痕とかすごく萌えませんか…。
エクスフィア攻めにすごくはまってた、そんな時期が私にはありました。
あと私は本命カプの話考えると、妙にコミカルというかドタバタというかそんな仕様になる…。
そしてそんな自分が恥ずかしい…。漫画より文章の方が恥ずかしい…。
でもロイゼロで出せそうなのこれくらいだったので晒しておきます。